Keck望遠鏡

番外篇

(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程入学予定 玉澤裕子)

図1 ハプナビーチ。 図2 Keck観測所。窓や芝生まで六角形になっています。 図3 望遠鏡の模型。下部にある六角形の集合体が鏡です。

 2012年11月12日~17日の間、ハワイのマウナケア山にあるKeck望遠鏡を用いた観測に行ってきました。今回は山頂には赴かずに、市街地にある観測所からリモートで観測を行いました。観測所があるのは、コナから北に車で1時間半ほどの所にあるワイメアという土地です。ここは標高が約1000mあり、山頂には劣りますが天の川が見えるほど星空が綺麗です。また、周辺にショッピングセンターなどが並ぶ中心街で、観測施設がある場所としては非常に利便性が高い土地です。

 私たちは観測の前日(12日)にコナ空港に到着しました。ワイメアに向かう道中、車の運転者が休憩をとるためハプナビーチという砂浜に少し立ち寄りました。ワイメアは標高が高いため寒いですが、麓はさすが常夏の島、11月でも夏の陽気で、多くの観光客がサーフィンなどをしてバカンスを楽しんでいました。ハワイの海は日本の海よりも澄んだ綺麗な青色でした。

 砂浜を去り、ワイメアにあるKeckの観測所に着いた後、まずは施設内を見学しました。この付近では、天気が良ければマウナケア山の山頂に望遠鏡群を望むことができます。一般公開も行われている展示スペースには、Keck望遠鏡の模型もありました。Keckの主鏡は六角形の鏡を合わせて作られた“セグメント鏡”です。直径1.8mの鏡を36枚並べて10mの口径を実現していますが、こちらの模型は、その構造まではっきり分かる細かな作りをしていました。こちらの模型にはセグメント鏡を強調するために鏡の間にはっきり隙間がありますが、実際は4nmという精度で並んでいます。他にも、Keckのリモート観測ルームや、図書室なども見学しました。図書室は主に技術者用のものらしく、Keckの設計図や、建設途中の望遠鏡の写真など、貴重な資料を見ることができました。

 一通り見学を終え、食料の買い出しも終えたら、翌日からの観測に用いるLRISという装置を使用中の方々の観測を見学に伺いました。LRISは初めて用いる装置なので、事前に様子を知っておくためです。しかし残念ながら、この晩の観測者は撮像を行っていました。我々が行うのは分光観測なので操作法が異なります。そこでこの日の予定は終了し、観測所の敷地内にある宿舎に戻り、翌日に備えて休みました。なお、宿舎の隣には共用のラウンジがあり、ここには共用の冷蔵庫やキッチン、洗濯機、ビリヤード台まであります。宿舎には冷蔵庫やポットがないので、みなさんこのラウンジをよく利用していました。

 2日目の13日からは2晩の観測が始まりました。この間は14時頃から準備を開始し、翌朝6時過ぎまで観測するという現地時間で完全に昼夜逆転の生活になります。12時間以上作業していることになるので、時差の影響はほぼないスケジュールといえども、明け方は疲れて睡魔との戦いになりました。また、観測の間は、夕方に一度食料の買い出しに行くのみで、後はずっと観測ルームに缶詰めでした。ですが、思い通りに行かない自然を相手にしつつも出てきたばかりのデータに一喜一憂し、待ち時間に先生や先輩方と会話しながら親睦を深めていく時間は、天文観測の醍醐味の一つです。

 2晩の観測を終えた15日には、仮眠をとった後、コナのホテルに移動しました。この日の飛行機には間に合わない時間でしたので、コナ市街を散策し、翌朝早くに帰路につき、今回の観測出張は無事終了しました。

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